食事療法は従来から糖尿病治療の基本でありながら最も継続困難なものでした。
SU剤とインスリンしかなかった時代には血糖コントロール不良の原因を患者の方々の食事療法のせいにする傾向があったのです。食事は個性と密接な関係があり厳密な食事療法にはストレスを伴い長期的限界があることを認識する必要があります。
治療を患者の方々の責任にしてはいけないのです。
戦後日本では乳製品を含む脂肪摂取量が増加し炭水化物摂取量は減少しています。そのため乳製品を含む脂肪摂取量の増加が近年の日本人における糖尿病増加の原因の一つであるといわれています。また逆に炭水化物摂取量の減少が糖尿病増加の原因の一つであるという学説もあります。
現時点において私は、糖尿病食事療法の歴史からみて食事は和食を中心とし標準的な炭水化物、タンパク質、脂肪のバランスのよい日本糖尿病学会のカロリー制限食(たんぱく質15%、脂肪25%、炭水化物60%)を勧めています。
そしてメトホルミンなどの薬物療法を上手に行い、ストレスのない程度に徐々に健康的な食事にもっていくように治療をおこなっています。食事制限によるストレスがステロイドホルモンの合成分解を通じて活性酸素を発生させ得る危険性も忘れてはなりません。またストレスは免疫細胞であるNK細胞を減少させます。
またフレッチャーイズムとして知られていた30回咀嚼することが食後血糖を下げ、肥満にも有効であると指摘されています。実践する価値があると考えています。
参考文献
1) 日本糖尿病学会編 「糖尿病学の変遷を見つめて 日本糖尿病学会50年の歴史」
2) 山本哲郎 「75gブドウ糖負荷試験2時間値の問題点と食後高血糖の再評価 前日の炭水化物摂取量の影響について」 第59回日本糖尿病学会抄録