ドクター紹介|福岡市博多区内科・糖尿病内科 | 山本診療所

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ドクター紹介

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院長ご挨拶

院長 山本 哲郎

私は、九大医学部を卒業後、内科医として約33年間、福岡、東京、米国で多くの患者の方々を拝見してきました。中でも2型糖尿病治療に最も力をいれてまいりました。その中で、従来のインスリン分泌刺激薬であるSU薬やインスリン療法ではいくら血糖コントロールを良くしても心筋梗塞、脳卒中、癌などの致命的な合併症は防げないのではないかと疑問をもつようになりました。

その後、インスリン抵抗性改善薬を中心とした治療に大転換したところ致命的な合併症の減少を肌で感じています。そして最近の多くの論文もこのことを支持しています。ただ残念なことに、現在の日本の2型糖尿病治療は混沌としており、いまだSU薬やインスリンの治療が主体です。さらに、まだ長期的副作用は不明なインクレチン関連薬が第一選択薬として使用され始めています。私は、多くの糖尿病患者の方々に、世界的視点にたった最良の治療法を知っていただくためこの専門サイトを開設しました。そしてこの度開業7年目を迎え糖尿病治療の最新の進歩を加え刷新いたしました。お悩みの方はどうぞご相談ください。

院長 山本 哲郎

略歴

  • 九大医学部卒業
  • 東京女子医大糖尿病センター
  • 米国メイヨークリニック留学
  • 九大病院総合診療部
  • 那珂川病院総合診療科

資格

  • 日本内科学会認定内科医
  • 米国ECFMG認定資格(米国における日本の医師国家試験合格に相当する資格)
  • 日本糖尿病協会糖尿病認定医
  • 糖尿病専門学術誌「プラクティス」アドバイザー
  • 高濃度ビタミンC点滴療法認定医
  • 日本東洋医学会漢方専門医

所属学会、研究会

血糖スパイクの虚説について

最初にはっきりさせておきたいことは、いわゆる「血糖スパイクが有害である」という仮説は科学的証拠がなく、虚説であるということです。この「血糖スパイク」すなわち食後一過性高血糖が現在日本中を覆っている糖質制限の根拠になっているものです。血糖スパイク(hyperglycemic spike)という表現は2005年にイタリアの研究者が使い始めました。異論のない真実のようによく喧伝されている血糖スパイクや食後高血糖が活性酸素を引き起こすという仮説に対しても測定方法の誤りや対象患者の問題があり、それを真っ向から否定した科学的な研究があるのです。血糖スパイク、食後血糖変動が活性酸素を引き起こすという仮説は2006年にいわゆる一流医学雑誌JAMAに掲載されたフランスの論文が有名でよく無批判に引用されますが、この論文は多くの問題があり、その後2011年にはオランダの研究者達から完全に否定されています。糖尿病の方だけでなく正常者の方を対象とした研究もありますが、やはり血糖変動による活性酸素の差は認めなかったのです。

糖尿病の病態は慢性高血糖つまり一時的ではなく高血糖の状態が続いている病態ですが、慢性高血糖を示唆する検査値として「早朝空腹時血糖」と「ヘモグロビンA1c」があります。早朝空腹時血糖は食事の影響を受けない血糖値の代表として、持続的血糖上昇を反映する値として、糖処理の基礎能力を表す値です。「ヘモグロビンA1c HbA1c」は過去1~2カ月の血糖値の平均を示す検査として過去の多くの研究に使われており糖尿病合併症との因果関係が証明されています。

しかしながら「血糖スパイク」「食後の一過性高血糖」すなわち「食後の短時間の血糖上昇」が糖尿病の合併症発症にどこまで影響しているかの評価はまだ定まっていません。食後の血糖値は食事内容とその時の体調によって大きく変わり変動の大きいものです。炭水化物だらけの日本の伝統的食事を考えてみても、炭水化物摂取後の短時間の血糖上昇が血管を傷つけるとは経験的常識的にも考えにくいものです。

1997年米国糖尿病学会が糖尿病の診断基準を負荷後2時間値ではなく早朝空腹時血糖で行うことを発表しました。その最大の根拠は負荷後2時間値の再現性のなさでした。それに対する反発として1999年日本のFUNAGATA研究、2001年欧州のDECODE研究、2002年アジアのDECODA研究などの疫学研究でブドウ糖負荷試験2時間値と心血管イベントとの関連性が指摘されました。これらの疫学研究が食後一過性高血糖の有害性の証拠のように唱えられていますが、これらはあくまで関連性であり因果関係は全く証明されていないのです。 「関連性は因果関係を証明しない。Correlation does not mean causation.」というのは疫学の根本原理ですが、実際にはしばしばこの原則を無視した主張が行われています。「血糖スパイク」「食後の一過性高血糖」を糖尿病の病態の原因に正式に加えるためにはいわゆる科学的と言われている「介入試験」により実証されなければなりませんがそれらが悉く失敗しています。過去20年近くの研究にも関わらず、その有害性をどうしても証明できないのです。過去に私は糖尿病学会でもこの点を日本の研究者達へ繰り返し問うてきましたが、誰もがその通りであると認めています。米国糖尿病学会が毎年発表しているガイドラインでも血糖スパイク、食後高血糖が心血管障害を引き起こすという証拠はないとしています。その根拠となった決定的な研究は2009年米国の「Heart2Dstudy」です。インスリン治療により食後血糖を低下させた群と空腹時血糖を低下させた群でHbA1cをほぼ同一にして約3年間経過を追った無作為介入試験で心筋梗塞発症の差はなかったのです。2010年の耐糖能異常を対象とした経口薬ナテグリニドを使用したNAVIGATOR研究でも同様の結果でした。

更に決定的なのは、2003年に発表された問題のあるSTOP-NIDDM研究の追試でもある2017年オックスフォード大学と中国との共同研究「ACE研究(The acarbose cardiovascular evaluation trial)」です。この研究においても耐糖能異常に対するアカルボース投与による心血管イベント抑制は認められなかったのです。以後、血糖スパイク、食後高血糖や血糖変動と心血管疾患に関する正式な介入試験は行われていません。

血糖スパイク、食後の一過性高血糖の有害性が否定されれば今流行りの糖質制限の理論的根拠は崩壊してしまいます。糖質制限を執拗に主張している医師達の論理はいわゆる「仮説の上に仮説を築く」という砂上の楼閣的な論理なのです。

2型糖尿病治療の問題点について

現在、糖尿病専門医の間では、日本人の2型糖尿病はインスリン分泌不全であるからSU薬やインスリンさらにはインクレチン関連薬を中心にした治療が必要であるという治療概念が主流です。しかしながら、私は今の日本人の2型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病)の病態はインスリン抵抗性(インスリン感受性低下)が主な原因であると考えています。したがって2型糖尿病治療の主体はインスリン抵抗性改善薬であるべきなのです。SU薬やインスリン治療により低血糖と高血糖の波が大きくなり血糖コントロールも不良である多くの患者の方々がおられます。この血糖の変動は最近になり持続血糖モニター(CGM)によってますます明らかになっています。低血糖からくる空腹感による食欲亢進と食事療法との精神的葛藤も多くの患者の方々を悩ませています。特にインスリン治療の場合、患者の方々は低血糖に対する不安感とインスリン注射のストレスで大変な負担を強いられています。このような治療が最善であるはずがありません(ただし1型糖尿病の方はインスリンが必要です)。またSU薬やインスリン治療が引き起こす高インスリン血症は、動脈硬化や癌の発症を促進する危険性が指摘されています。SU薬やインスリン治療では心筋梗塞、脳卒中や癌を予防することは困難です。インスリンはホルモンであり高い血中濃度は害となるのです。

現在世界中で広く用いられているインスリン抵抗性改善薬は、メトホルミン(メトグルコ®)とピオグリタゾン(アクトス®)です。共に肥満の有無に関係なく有効です。今後も糖尿病の新薬が発売される予定になっていますが、これらの薬剤を越えるインスリン抵抗性改善薬はありません。血糖降下作用に加え、メトホルミンには抗癌作用があり、ピオグリタゾンには抗動脈硬化作用があるすばらしい薬剤です。私はこれらの薬剤を十分に用いてインスリン抵抗性を解除することが現在における最善の2型糖尿病治療であると確信しています。特にこの二剤の併用療法は驚くべき効果を生む場合が多いことを経験しています。確かに2型糖尿病でもインスリン分泌が著明に低下しやむを得ずSU薬やインスリン治療が必要な方もおられます。しかしながら多くの患者の方々はインスリン抵抗性改善薬を十分に用いられることなくSU薬やインスリン治療を行われているのではないでしょうか?これらの薬剤を使いこなすためには十分な臨床経験と2型糖尿病の病態に関する深い理解が必要であり日本全体でみても信念を持ってこのような治療を行っている医師は現在まだ少数です。またインクレチン関連薬は最近日本では多く使われている薬剤ですが、インクレチンもホルモンであり高インクレチン血症の有害性やDPP4阻害による免疫低下などまだまだ長期的副作用が未知の段階です。2型糖尿病の病態から考えても現時点において第1選択薬にするべき薬剤ではないと考えています。また新薬であるSGLT2阻害薬は、慎重に適応を選べば体重減少、血中インスリン濃度低下を期待できる薬剤ですが、個人差が大きく脱水などの危険性もあり注意深く経過をみていく必要がある薬剤です。医師としての倫理観を大切にしたいと思います。
私は、一人でも多くの糖尿病患者の方々が笑顔で最小限のストレスで最高の健康状態を維持できることを目指して日々診療を行っています。

参考文献
1)  山本哲郎「転換期の2型糖尿病治療」臨床と研究 第86巻12号
2)  山本哲郎「インスリン抵抗性改善剤併用によるインスリン離脱療法」第56回日本糖尿病学会抄録