米を食べると糖尿病になるという大きな嘘について|福岡市博多区内科・糖尿病内科 | 山本診療所

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白米を食べると糖尿病になるという虚構について

院長コラム2021.10.10

Never put your trust in anything but your own intellect .        

 

 

2020年のDiabetes Careという米国の医学雑誌に「白米を食べると糖尿病になる」という結論を謳ったかのような論文が掲載されました。

 

White Rice Intake and incident Diabetes: A Study of 132,373 Participants in 21 Countries Diabetes Care 2020

 

Prospective Urban Rural Epidemiology (PURE) studyという世界五大陸21か国延べ132、373人のその数を自慢にした栄養疫学研究です(日本は含まれていません)。約9.5年後の疾病頻度を調べています。米を歴史的に主食としてきた日本人の一人としてこの論文を詳細に読んでいくとそこに潜んだ虚構に気づくことになります。

 

第一に、研究方法自体に大きな問題があります。研究の最も重要な栄養調査が最初の一回しか行われていないことです。その後約9.5年間調査は行われず糖尿病の発症をみているだけなのです。現在の情報化世界で約9.5年間食事が変わらないとは考えにくく研究データ不足が根本的にある研究です。

 

第二に、栄養調査の方法にも問題があると考えられます。食品摂取頻度調査票(Food frequency questionaires;FFQ)という食品の摂取頻度を質問票で尋ねています。直接面接によるものではありません。FFQという栄養調査の方法は1980年米国の「The Nurse’s Health Study」で本格的に使用され始めました。食物のリストを予め選択し、摂取頻度(全く食べない、日に何回、週に何回、月に何回など)や一回当たりの目安量を選択していく方法です。通常過去一年間の食事を思い出してもらい、平均的なものを問うています。この方法は多人数の栄養調査を低コストで簡単に行うために導入されたものです。しかしながらこの方法には専門家からもその信頼性に関して多くの疑問が指摘されています。致命的欠点は、この調査でわかるのはあくまで各栄養素の相対量(the nutrient composition)であり摂取した絶対量は不正確であることです。これは肥満が病態に大きく関与する糖尿病や動脈硬化疾患の疫学研究には不適切であることを意味します。大規模栄養疫学研究は元来悪性腫瘍と栄養との関連を調べるために開始されたという歴史があり、その研究データを使用して糖尿病や動脈硬化疾患の領域まで手を広げていることにそもそも問題があるのです。

 

第三に、このような疫学調査において仮に白米の摂取量と糖尿病の発症に関連性(correlation)があるという結果が適切に導かれたとしても、それは因果関係(causation)があるということではないということは臨床疫学の常識であるにもかかわらずまるで因果関係があるかのような論調であることです。関連性は因果関係を意味しないのです(Correlation does not imply causation)。しかも関連性があったのはインドなどの南アジアのみで中国など他の地域ではありませんでした。経済レベル、食文化、医療システムなどの大きな違いのある21か国の国々を一緒くたにして結果を出そうという研究方法そのものに研究の粗さを感じます。ますます関連性が因果関係にはならないと考えることができます。

 

 

 

日本からも2010年「米を食べると女性は糖尿病になる」という奇妙な論文が出て議論を醸し出しました。約6万人の日本人を約5年間追跡した研究です。

 

Rice intake and type 2 diabetes in Japanese men and women: the Japan Public Health Center-based Prospective Study   Am J Clin Nutr 2010

 

この論文も詳細に読んでいくとやはりFFQを使用したもので1回しか調査しておらず、FFQでは総カロリーなど絶対量は信頼度が低いにも関わらず摂取した米の相対量ではなく絶対量で分類して結論を導いており、実際総摂取カロリーに差があります。また女性だけに有意差があったという点も栄養調査自体の信憑性に疑問が持たれています。そしてやはり関連性をいつの間にか因果関係にすり替えていく論調です。

 

 

 

米と糖尿病の発症に関しては過去にいくつかの研究がありそれらは相反する結果を出していることを知る必要があります。どの食物でも非常に大量に摂取すればカロリー過剰となり肥満そして糖尿病を引き起こすであろうことは明白です。しかしながらこれらの論文はあえて米に白羽の矢を立て論文を読む者に「米を食べると糖尿病になる」がごとく印象を与える論調です。

 

このような栄養疫学においてはそもそも厳密な介入試験は困難であり、因果関係ではなくあくまで関連性を見出すためのもので他の多くの隠れた原因(confounding factors)が関与し、しかも再現性に乏しいのです。流行りのEBM(Evidence-based medicine)を栄養疫学においても利用しようとすることは非科学的であると考えています。米国のある栄養疫学の権威は、自分に研究費を与えてくれればどのような結論でも作為的に導くことができると栄養疫学の恣意的利用の危険性を暴露しています。

 

私は、栄養疫学の研究結果に対しての医師としての最終判断は、直観、個人的経験、臨床経験、基礎研究、日本の食事の歴史的考察や常識などを踏まえて総合的に判断すべきものであると考えています。

 

日本人全体としては米の摂取量はどんどん減少して昭和30年代の約半分になっているにもかかわらず逆に糖尿病は激増しているという事実を深く考える必要があります。

 

 

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