院長コラム2021.05.05
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新型コロナウイルス感染症に対するビタミンC(アスコルビン酸)の多くの研究論文が昨年来、世界中から発信されています。
ビタミンCを新型コロナウイルスの予防や治療に使えないかという論文です。新型コロナウイルス感染の重症化因子(男性、高齢、糖尿病、高血圧、慢性閉塞性肺疾患 など)の多くは潜在的ビタミンC欠乏を示唆することがその根拠のひとつであり、食事からのビタミンC摂取量が十分の場合でもナトリウム依存性ビタミンC輸送体(sodium- dependent vitamin C transporter)の変化によりビタミンC欠乏が起こり得ると考えられています。逆に言えばビタミンC欠乏が新型コロナウイルス感染の重症化をもたらす要因の一つであると推測することもできます。また多くの論文は、過去のビタミンCの生体内での作用に関する膨大な研究結果からも理論的には新型コロナウイルス感染症に有効であろうと推測しています。
具体的には免疫調節作用(自然免疫および獲得免疫)、抗ウイルス作用、抗炎症作用、抗血栓作用、抗酸化作用などがその根拠です。更には、副腎におけるコルチゾールの産生にビタミンCが必要であり、ビタミンCの補完により副腎機能強化そして抗炎症ホルモンとしてのコルチゾール産生を増加させることも期待されます。コルチゾールはコロナ肺炎の治療に既に使用されているホルモンであり薬剤です。そしてビタミンCは肺胞上皮防御機能の強化も指摘されています。また敗血症という重篤な感染症が点滴によるビタミンCの併用で生存率が向上するという過去の臨床研究結果も重症新型コロナウイルス肺炎に対して希望を与えているようです。
私が勤務医時代には細菌性肺炎の入院患者の方には抗生物質とビタミンC1~2gの点滴を併用するようにしていましたが多くの方は治っていきました。細菌性肺炎は必ず治せるのではないかとさえ感じていたのです。その後、米国から同様の治療の報告があるのを知り共感を覚えた記憶があります。
新型コロナ感染症に対するビタミンC療法に関して米国から症例報告などの貴重な論文が出ています。
2020年7月には米国ミシガン州立大学から74歳女性の新型コロナウイルスによる重症肺炎の方がビタミンC11g/日の持続点滴により劇的に回復した症例を報告しています。この患者さんは基礎疾患に肥満、高血圧、重症筋無力症がある方でした。ヒドロキシクロロキンやアジスロマイシンの投与にも関わらず肺炎が増悪し急性呼吸窮迫症候群(ARDS: acute respiratory distress syndrome)そして敗血症性ショック(septic shock)となり人工呼吸器に装着された状態でしたがビタミンC11g/日の持続点滴の開始によりわずか3日後には肺炎像の著明改善を認め人工呼吸器からの離脱に成功しています。その後ビタミンCは延べ10日間持続点滴されており肺炎は完全に治癒して退院されています。重症新型コロナ肺炎による死亡率は約50%と言われていますが、この病院で重症新型コロナ肺炎において過去でもっとも劇的に回復した症例であったということです。またビタミンCの経静脈投与は家族の希望で開始したと述べられています。素晴らしい症例報告です。
Waqas Khan, H.M et al. Unusual early recovery of a critical COVID-19 patient after administration of intravenous vitamin C Am J Case Rep 2020
また同時期に米国アインシュタイン医療センターからは17例の新型コロナウイルス肺炎患者に1gのビタミンCを8時間毎に経静脈投与(3g/日)を3日間行い炎症所見も含め臨床的改善を報告しています。
Raul Hiedra et al. The use of IV vitamin C for patients with COVID-19: a case series Expert Rev. Anti Infect. Ther. 2020
更に米国の救命救急医学の専門家達が、メチルプレドニゾロン、ビタミンB1、ヘパリンに加えビタミンCを6時間毎に3g経静脈投与することを提案しています。病理所見からも新型コロナウイルス感染の重症化の原因はウイルスそのものより患者の免疫反応であることが判明しており、これら薬剤の有効性の重要な根拠であるとしています。実際の臨床で死亡率の低下を認めており、有効性、安全性および安価な点からいわゆるランダム化比較試験( randomized controlled trial )なしでもこの治療法は倫理的にも許されるという論調です。
Marik PE et al. MATH+protocol for the treatment of SARS-CoV-2 infection: The scientific rationale Expert Rev. Anti Infect Ther. 2020
以上のような実際に瀕死の重症患者を診ている医師達からの臨床報告は迫力があり、臨床医学の原点を感じさせます。大規模臨床試験より価値のあるものだと考えています。目の前の患者に対してまだすべての医師のコンセンサスを得ていない治療法を自分の責任で行うことは勇気が必要ですが、患者家族の希望も尊重しながらビタミンC治療を行おうとしている米国の医師達の倫理観に対して敬意を表したいと思います。
一方ではいわゆるEBMの立場から2020年の時点で約45のビタミンCと新型コロナ感染症に関する臨床試験が世界で進んでいると言われています。先鞭をつけたのは中国武漢での研究です。しかしながらビタミンCがEBMの立場から新型コロナウイルス感染症に対して公認されるハードルは高いと推測しています。
1992年から台頭してきた「科学的証拠に基づく医療」と訳されるEBM(Evidence -based medicine )という医学の一流派が科学的という仮面をかぶって多くの有益な治療法を切り捨ててきました。
EBMが科学でない最大の根拠は自然科学の第一条件である再現性を無視している点です。膨大な費用と労力と時間を要求するランダム化比較試験による大規模臨床試験を科学的であると位置づけていますが、そのような臨床試験は追試自体が困難なのです。たった一つの研究でもそれを真実であるかのように大騒ぎします。再現性を最初から考慮していないのです。このような姿勢に対して自然科学者からは非科学的(unscientific)であるという声が上がっています。
今回のような人類の危機とでもいうべき状況においてさえもこの非科学的なEBMが患者一人一人にとっての最善の医療の障害となっています。EBMはあくまである集団の平均を診ており、個々の患者にとっての最善の治療法を示しているわけではないのです。新型コロナウイルスの世界的流行を通じて医学の原点に帰りEBMを超える新たな医学を創っていく時代が到来していると感じています。
ビタミンCのその際立った安全性から考えても、その今までの膨大な基礎研究や臨床報告からも、新型コロナ肺炎に対してビタミンCを経静脈投与することは日本中の病院で一刻も早く試みるべき治療法であると考えています。しかも上記の報告で意外とビタミンC総量が少ないことからもその量は保険適応のあるビタミンC1~2gのアンプルを使用することが可能ではないでしょうか。ビタミンCは安価であり、重症感染症の場合は血中ビタミンC濃度の低下があることは明らかですから、保険診療の範囲内で重症ビタミンC欠乏症の診断でのビタミンCの経静脈投与も正当な筈です。
今、20世紀の天才科学者ライナスポーリング博士の並外れた洞察力が新型コロナウイルス流行を通じて甦っているかのように見えます。彼は、ビタミンC欠乏がウイルス感染症重症化の原因となり、この安価で極めて安全な栄養素であるビタミンCを世界中の人々が服用していけばパンデミックを乗り越えていけるのではないかと示唆しています。
今こそ非科学的なEBMを超えて患者一人一人に最善の治療を行うという立場からビタミンCの新型コロナウイルス感染症に対する本格的投与を検討すべき時期ではないかと考えています。
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