院長コラム2018.10.28
1981年にカナダのJenkins が発表したグライセミックインデックス(GI:Glycemic index) は有名ですが、1997年にオーストラリアのHolt が発表したインスリンインデックス(Insulin index) は広く知られていません。しかしこの研究は糖尿病の食事療法を考える点からはGI以上に重要であると考えています。
Insulin index は、健常者における同一カロリー( 240kcal )の日常食品の食後インスリン反応を定量的に評価したものです。
結果は、高タンパクもしくは高脂肪を含む炭水化物は炭水化物単独より食後インスリン濃度が上昇するというものでした。すなわち炭水化物を高タンパクや高脂肪と共に食べると食後インスリン濃度がより上昇するのです。また炭水化物の内、砂糖単独でみると量に比例してインスリン分泌が上昇しますが、でんぷん単独では上昇しませんでした。タンパク質や脂肪は単独でみれば量に比例せずむしろインスリン分泌が低下しています。すなわちたんぱく質や脂肪が単純に膵β細胞を刺激してインスリンを分泌させるのではないということを意味します。また食物繊維量はインスリン分泌に無関係でした。
炭水化物が唯一のインスリン分泌を刺激する栄養素ではなく、タンパク質や脂肪もインスリン分泌を刺激するという事実はまだ十分に認識されていないのではないでしょうか。食後インスリン反応言い換えればインスリン必要量は食品中の総炭水化物量に必ずしも比例するものではありません。高脂肪や高タンパクが炭水化物に加わることによってインスリン必要量が増加するのです。その背景としてはインスリン感受性低下, 消化吸収や消化管運動の変化などが生じているのではないかと推測できます。
結論として高タンパク高脂質のいわゆる欧米食は食後インスリン濃度を上昇させるということでした。高インスリン血症はインスリン抵抗性の結果でもありまた原因でもあると考えられています。更に高インスリン血症は動脈硬化や悪性腫瘍を増悪させます。この研究からも高インスリン血症を引き起こさないという観点からは高タンパク高脂質食は避けたほうがよいと考えることができます。また米などのでんぷん(複合糖質)自体ではその摂取量に比例してインスリン分泌を増加させないという結果も示唆に富むものです。
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