院長コラム2018.06.06
5月24日から26日まで東京で行われた第61回日本糖尿病学会に参加し発表してまいりました。
学会全体としてはSGLT2阻害薬への期待を込めた発表が多かった印象です。私もSGLT2阻害薬は、副作用の個人差に注意しながら慎重に治療を行えば、高インスリン血症改善の観点からも有望な薬剤だと考えています。ただし服薬初期は不整脈にも注意が必要です。欧米の大規模臨床試験では交感神経の興奮は引き起こさないことになっていますが、あくまで平均であって、実際は交感神経興奮が起こる方もおられます。
血糖の日内変動と日差変動の議論がありました。日差変動に関しては、従来より血糖改善を急速にしすぎると網膜症や神経障害の増悪があることは経験的も指摘されており、注意すべきことであると考えられます。しかしながら日内変動に関しては、低血糖が血管に悪影響を及ぼすことは明らかですが、低血糖がない状態でHbA1cが同程度の場合、血糖の日内変動の大きさが動脈硬化にどの程度影響があるかに関して決定的な証拠はなく、むしろ影響が少ないのではないかと考えるのが現時点では科学的かつ倫理的です。血糖の日内変動の悪影響を過度に強調することは患者の方々に大きなストレスを与えることにもなります。