糖尿病と心筋梗塞、脳卒中
糖尿病は大きな血管の動脈硬化を引き起こします。心臓の冠状動脈に動脈硬化が起これば心筋梗塞を、脳血管に起これば脳卒中を、下肢動脈に起これば足壊疽の危険性が高くなります。最近の研究で最も重要な発見は、血糖コントロールだけではこれらの動脈硬化が予防できないということです。血糖以外の危険因子もコントロールすることが必要になります。
すなわち単純にヘモグロビンA1c7%(NGSP)未満、更にはもっと厳しく6%(NGSP)未満に血糖コントロールしても動脈硬化予防の保証にはならないという点です。血圧、高脂血症、喫煙などだけでなく、特に高インスリン血症のコントロールが必須です。また薬剤性の低血糖も心筋梗塞、脳卒中の原因となります。だからこそ、血中インスリン濃度をできるだけ上げないで低血糖を起こさない治療が重要なのです。
糖尿病と癌
糖尿病の致死的合併症として癌を忘れてはなりません。糖尿病患者に癌の発症が多く死因の第1番目であることが示されています。原因としては、高血糖による酸化ストレス、慢性炎症そして高インスリン血症も考えられています。ですから、2型糖尿病においてSU薬や長期インスリン療法など血中インスリン濃度を高める治療はできれば避けたいと考えられるのです。
また、糖尿病患者には胃癌、大腸癌が多いと指摘する論文があり、これらは早期発見による治療も有効であり定期的な消化管の健診は必要であると考えます。膵癌、肺癌など多くの癌は現在も決定的に有効な治療法がなく、適切な糖尿病治療以外に、禁煙、節酒、脂肪制限、動物性蛋白過剰摂取を控える、野菜、果物の摂取、適度な運動、適切なビタミンミネラルの摂取などによる癌の予防が最も大切です。また精神的ストレスが活性酸素を引き起こし癌の大きな原因であることを忘れてはなりません。
糖尿病と眼、腎臓、神経合併
糖尿病3大合併症とは小さな血管の障害のことを言い、眼の網膜血管、腎臓の糸球体血管、神経の障害がおこります。多くの研究で血糖コントロールはこれらの合併症を予防することが証明されています。HbA1c(NGSP)7%未満のコントロールはこれらの合併症の予防を可能にします。
網膜症は末期にならないと視力低下がおこらないので定期的な眼底検査が大切です。早期腎症の発見には尿中微量アルブミン検査が必要であり、全身の血管障害の有無を反映します。神経障害に関しては、毎日足を調べる習慣や適切な靴を履くことなど足の管理が大切です。
糖尿病と認知症
糖尿病の方に血管性認知症だけでなくアルツハイマー病が多いといわれています。その原因として高インスリン血症が指摘されています。更には低血糖も認知症の原因になります。認知症予防の観点からも血中インスリン濃度をできるだけ上げないで低血糖を起こさない治療法が大切なのです。また認知症予防のためにもビタミンB群やイチョウ葉エキスが有効であるといわれています。
糖尿病と歯肉炎、歯槽膿漏
糖尿病の方に歯肉炎が多いことはよく知られています。逆に歯肉炎、歯槽膿漏は慢性炎症として糖尿病の悪化に影響を与えることも指摘されています。毎日のブラッシングやデンタルフロスによる口腔衛生の管理は糖尿病の治療の一つとして考えるべきです。また高齢者の誤嚥性肺炎予防のためにも口腔衛生はとても大切です。